清流の夕べ 〜立川さんと八十島君SSS1〜

 

 二人が目を覚ましたころには既に日が傾き、世界は朱色に染まっていた。

「ふぁ・・・あ・・・」

 先に目覚めた八十島は辺りを見回すとでかかったあくびが止まってしまった。

「あちゃ〜・・・立川さん、またやっちゃったね・・・」

「みたいね・・・」

 八十島に声をかけられ、立川も苦笑いを浮かべながら起き上がった。

 二人は白い校舎の壁を背にして立ち上がった。

「授業・・・またサボっちゃったね。」

 八十島が立川に向かって少し照れたような苦笑いを向ける。

「そうね。」

 立川もそれに同じく苦笑い・・・

 さっきから苦りっぱなしの二人である。

 しかし、不思議と彼らは嬉しそうな、楽しそうな・・・

 二人そろって溜息をつくと、一瞬顔を見合わせ、はじけるように笑った。

 と、そのとき、立川はいきなり八十島の後ろに入り込んだ。

「あははは・・・え、な、なに?立川さん??」

 立川はそのまま八十島を捕まえると朱に染まった白壁にもたれかかる。

「ふ、振り子・・・?」

 立川は唐突に振り子を八十島の目の前にたらす・・・お察しの通りだ・・・

「ちょ、ちょっと立川さん・・・!」

「ほ〜ら、まぶたが重くなる〜・・・なんてね。」

 紅い陽射し、遠くからは運動部の掛け声が響いている・・・

 八十島は一瞬、なんだか懐かしい感覚を覚えた。

「立川さん、もうこんな時間だし、生徒会室に行かないと・・・」

 言うと八十島は立川の手をほどこうとする。

 しかし、立川は離そうとしない。

「ちょっと・・・立川さんってば・・・」

「いいじゃない・・・もうちょっとだけ・・・」

 ふと目に入った立川は頬にわずかに赤みが差し、瞳には潤いを湛えている。

 慣れた顔のはずなのに、何故だか妙に胸が高鳴るのを八十島は感じていた。

「好きでしょ・・・?かけられるの・・・」

「・・・うん・・・」

 二人の時間は、まだ流れそうに無い・・・        清流の夕べ(完)