催眠なんてこわくない〜催眠初心者に捧ぐ〜

 俺は先日、見てしまいました。八十島が立川に掛けてたんです・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「催眠術」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ええ、そりゃあもう、驚きましたとも。だって八十島・・・

 

 

 

 

 

 

 

洗脳で彼女作ったんでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 そんで俺は聞きに行きましたよ。

「洗脳ってどうやってするの?」

 あ!テメッ、八十島!「やれやれ」って顔でため息つくんじゃねぇ!!

 いやいや、すみません!ササッ、八十島先生、教えてくださいな!!

 

「そもそもさぁ、もう催眠掛けてたことについてはいいわけしないけど・・・彼女が最初に僕にかけたんだよ?・・・って、まぁいいや、今そんなこと言っても仕方ないし・・・」

 

そうそう、それはいいから早く教えてくれよ。

 

「え〜っと、その前に、小早川(こばやかわ)君。君に一つ言っとくけど、催眠で洗脳なんて、できません。簡単にできたら僕犯罪だよ・・・」

 

 え〜、俺こないだテレビで見・・・ってだからやれやれのため息するなって! 大体催眠術なんて怪し・・・

 

「ちょっと待った!『催眠術』って呼び方は不適切だよ。この名前もそもそも誤解の原因なんだけど、これは昔の学者さんがその見た目から勘違いでつけた名前なんだ。名前をつけた本人もそれを一生悔やんでたくらいさ。今では誤解を減らす意味も込めて『催眠』って呼称が一般的だよ。」

 

 フムフム、ぶっちゃけ小難しい話は分からんが『術』はいらんらしい・・・で、どうやってやるんですか?

 

「じゃ、逆に聞くよ。君は『催眠』ってどういう仕組みだと思う?」

 

 う〜ん・・・

 

 

 

 

超能力?

 

 

 

 

 あっ!てめ、今なんかスッゲ〜「やっぱり」って顔しやがったな!じゃあなんだよ!説明しろよ!!

 

「いいよ。まず・・・そうだね、君って確か野球部だよね?ピッチャーだったかな・・・じゃあ、マウンドに立ったときってどんな感じ?」

 

 は・・・?ん〜、なんていうかこう・・・バッターとキャッチャーミット以外は目に入らなくなるな・・・すごい、キャッチャーのサインとか作戦に集中してて、他は何も考えられないね。何か時間が流れるのも忘れるよ。

 

「そう!それだよ。それが催眠の基本原理なんだ。キーワードは『集中』だよ。人は意識を一つに集中すると他の部分は無防備になるんだ。そこへ言葉を・・・『暗示』って言うんだけどね?を、かけて上げるんだ。すると・・・」

 

 操れるってわけか!?

 

「いや、大体そうだけど、厳密には違うんだ。確かに催眠ではいろんなことができるけど・・・本人が心の底から嫌だと思うことは絶対にさせることができないんだ。それに、掛けられてる人は意識もちゃんとあるしね。」

 

 え?でも、目は閉じてるし、言うことは聞いてるぞ。(テレビのショーで見た)

 

「じゃあ、先の例えで考えてごらんよ。君は試合中意識は無いかい?キャッチャーがどんな無茶なサイン出してもその通り投げる?スタンドからナイフを持った男が出てきたら、逃げるなり反撃するなりするでしょ?催眠も同じことだよ。これは極端だけど『死ね』と命令されて死ぬ人なんて、いやしないんだからね。催眠も立派な科学なんだ。世界中で研究されてて、いろんな分野で役に立ってる。野球の世界でも、一流選手の多くは形は違ってもその力を利用しているんだよ。」

 

 ほぉ〜・・・そうだったのか。

 

「あら?八十島君・・・と、小早川君?」

 

 あ、立川・・・あれ?洗脳じゃないんだよなぁ・・・じゃあ二人は?

 

「立川さん、ごめ〜ん。小早川君、この前のアレ、見てたってさ。」

 

「あらぁ・・・」(小早川の目の前で不意に手を叩く)

 

 うわッ!!

 

「シッ!!静かに!目を閉じて!!ほら、すぅーっと・・・いいわよ。とっても気持ちいい・・・ふかぁ〜く沈んでいく・・・もう何も考えられない・・・」

 

 あ、あれ?目が開かな・・・あ・・・なんか、ぽぉ〜っと、して・・・

 

「立川さん・・・いつの間にそんなの覚えたの・・・?」

 

「あらぁ、だいぶ前よ?付き合い始めてちょっと、くらいかなぁ♪」

 

「敵わない訳だよ・・・」

 

「じゃ、適当に忘却暗示掛けますか。」

 

「立川さん・・・催眠ってそんな軽いもんじゃないと思うんだけど・・・」

 

  〜二時間後〜

 

 う〜ん、すがすがしい気分だ。何だかとっても勉強もできた気がするし。何のかは分からんが・・・ま、気分爽快!ってかぁ!?しかし、俺は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故夜の校舎に一人きりですかーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ッていうか俺、ここ2、3日の記憶が無いんですけど・・・

 

 その後彼は二人の秘密を再び思い出さぬよう度々催眠されるのであった。

催眠なんて怖くない(完)

 

〜補足〜

 最後の方のシーンで立川さんが使っていたのは『驚愕法』と呼ばれるれっきとした催眠技法です。なお、催眠の原理についての知識をしっかりと習熟し、よほど技術に熟練していなければ使いこなせません。誤解・無意味な真似などなさらぬようお願い致します。これはあくまで小説ですので、いくつか演出として誇張している部分がありますので、ご了承下さい。ちなみに、読んでしまってから言うのもなんですが、これより先に『トリッキー・ブルー』『謎の催眠合戦』をお読みになった方が、小説としてはよりお楽しみになれます。・・・って、もう遅いか。(苦笑)



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