フレンドシップ 〜一筋の光明〜

 

 最初に違和感を感じたのはあの時……

「……会長……副長と喧嘩でもしたのか?」

「い、いや……別に……そんなことは無いけど……」

 あの時、明らかに八十島君は動揺した……

 高井さんの異変……

 立川さんが戻ったときの八十島君の一瞬の萎縮……

 そして何より、立川さんが八十島君を見た瞬間の……あの目……

 あれほど冷たい目をした立川さんは初めてだった……

 それら全てはほんの一瞬の出来事だった……

何かの間違いであってほしかったが、しかし間違いない……

あの日……あれが、異常の始まり……

なぜならあの日、僕自身も……

 

「はぁ……休み時間まで仕事かよ……」

 それは一週間前の月曜日である……

生徒会会計長「猪狩郁典」は昼休み中に部活の会計案を職員室へ提出するように言い渡されていた。

「全く……やっぱり昨日のうちに済ませておくんだったなぁ……」

 冷たい空気を肌に感じ、愚痴りながらも生徒会室の鍵を開ける。

「……あれ?」

 確かに鍵をまわした。

 しかし、鍵が閉まっている。

「っかしいなぁ〜……」

 といいつつもう一度鍵を回す。

 ガチャッ……

「……開いた?」

 そんなはずは無い。

 先週の当番は自分だったが、鍵は明らかに閉めた。

 それとも休み中に誰かが使い、閉め忘れたか……

 最悪の場合、不審者が紛れ込んでいる恐れがある。

 ともかく、あまりいい事態は予想できない。

 念の為数分ほど間をおき、その後音を立てず室内へと入った。

……勘違いだったみたいね。さて、続きといきましょうか。

 生徒会室の奥から少女の声が聞こえる。

 この部屋の奥は壁を一枚挟んで物置のようになっている場所がある。

 本来そこは見た目どおり物置なのだが、最近は少し違う。

 副長、こと高井洋子が一部を片付けて勝手に昼寝スペースを作ったのだ。

 彼女は時々ここで授業をサボる。

 声はそこから聞こえていた。

 猪狩は恐る恐るそちらへ近づいてみる。

ほら、高井さん……とってもリラックスして、いい気持ちでしょ……?

(高井さん……?)

 体育の時間はいなかったはずだ。

 今日は欠席したものと思っていた。

 しかし、その声は確かに『高井さん』と言った。

 この位置ではしっかり声が聞こえない。

 ばれる危険はあるが、ゆっくりと薄暗い室内を移動し物置を覗き込んだ。

「これからあなたにいくつか質問をするわ……高井さんは、頭に浮かんだことが無意識に口から出てくるわよ……」

 そこにいたのは監査、こと立川桂と、椅子に腰掛けた高井だった。

 立川は高井になにやら一方的に話している。

「正直にお話できたら、もっと気持ちよくなれる……質問に答えるたびに、もっとふかぁ〜く催眠状態に入れるの……とってもリラックスして、いい気持ちよ……安心して、あなたが話したくないことなら強制はしないわ……」

 その声はまるで誘うような、引き込まれそうな声だった。

 傍から聞いているだけで頭の奥がしびれて、心を溶かされるような声。

(これ、催眠だ……それも素人じゃない……!)

 猪狩は少々雑学に通じており、その一つとして催眠も知っていた。

 実戦経験こそ無いが、見れば上手いか下手か位はわかる。

「高井さん……一昨日は、どうして私たちの邪魔したの……?」

 立川は優しい声で高井に質問する。

 しかし、その眼は笑ってはいなかった。

「邪魔……したかったんじゃないけど……なんか、うらやましかったから……」

 少しゆっくりとした口調で高井が言葉を返す。

 そこにはいつもの快活な様子は微塵も感じられない。

「うらやましい……?」

 少し訝しげに立川が返す。

 猪狩は依然隠れて様子を伺っていた。

「うん……あたしは、そこまで信頼し合ってる仲間って、いないから……」

 その高井の言葉に、立川は一瞬悲しげな表情を見せた。

 しかし、それも一瞬のこと。

 何事も無かったように立川は話を続けた。

「でも、あれは良くないことよ……? 私と八十島君は、とっても困ったわ……いい? 次また同じようなことがあったら……『アレ』だからね……?」

 立川はまるで子どもに諭すかのように言葉を紡ぐ。

 その表情は実ににこやか、声は実に穏やかだったが……

「あ、『アレ』かッ……あれだけはッ……か、勘弁してくれッ……!!」

 それまで弛緩していた高井の表情が突如青ざめ、まるで悪夢にでもうなされているかのような様相を呈した。

(っていうか……『アレ』ってなんなんだ!?)

 しかし、猪狩はそれを聞きにいくわけにもいかず、高井さんがどんな恐ろしいめにあったのかと頭を抱えるのであった。

「こうしていると、すぅ〜っと心がとろけていく……さぁ、もう大丈夫……」

 気が付くと立川は既に高井を落ち着かせ、次の質問へ移っていた。

「八十島君のこと……どう思う……?」

「いい奴……なんでも、できるし……すごいと思う……」

 高井は特に迷うことなく答える。

 しかし、立川はそこから矢継ぎ早に言葉を返してゆく……

「そうかしら……確かに『イイコ』よね。でも、彼だって人間、完璧じゃないわ。完璧な人間なんていない。そうでしょう?」

「う、うん……」

「彼にだって、悪いところが無いわけじゃないわ。そうじゃない?」

「それは、そう……」

「例えば一昨日。久しぶりの二人きりなんだから、嫌なものは嫌って自分の意思をしっかり言えるべきだわ。そう思わない?」

「う、ん……」

「私だって辛かったのに、自分が1年もほったらかしてたことは棚に上げて、私ばっかり攻めるのよ? ひどいと思わない?」

「うん、それは……ちょっとひどい……」

(イエスセットか……!)

 相手に「Yes」と言わせ続けることで自分に対して肯定的な流れを作りだす単純な誘導トリック。

ちょっとしたことだが、これが意外と効果的なのである。

「そう、八十島君ってばひどいの……ねぇ、高井さん? 私、ちょっと八十島君を懲らしめてあげようと思うの。そのほうが彼のためにもなるでしょ?」

「会長の、ため……?」

「そうよ? 悪いところを悪いままにしていたら、彼は一生成長できないわ。だから、教えてあげるの。八十島君が自分の悪いところがわかるようにね?」

「会長の、ため……」

「高井さん、協力してくれるわよね……?」

「うん……二人のため……」

 そこからの彼女の手腕は見事だった。

 自分の八十島に対する怒りの感情に高井を共感させ、さらには用のない時には彼の存在すら認知しないように後催眠を与えたのである。

 通常催眠で人を支配することはできない。

 しかし、立川は『支配』ではなくあくまで『協力』を前面に押し出し、あえていつでも計画から下りる自由を与え、高井の心を掴んだのだ。

 高井はあくまで『会長を助ける』というつもりで協力しているのだろう。

 更には自分がかけられたことと全く同じ内容を他人に催眠するように後催眠のプログラムを組み込んだ。

 これはかつて八十島に行った物と同じ仕組みであるが、今回は以前とは違い時間に余裕が無く、充分な指導はできない。

 おそらくは放課後にでも再びしっかりと教え込み、催眠が自動的に全校へと広がってゆくシステムを作り上げようとしているのだろう

 そして立川はこれらをわずか数分のうちにこなしてしまったのである。

 昼食の時間を含め、昼休みはまだ半分以上残っていた。

「さて、そろそろ仕上げましょうか……」

 言うと彼女は高井の額に手を当て、優しく撫ではじめた。

「ほぉら……こうしていると、頭の中がぽぉ〜ッとしてくる……だんだん霧がかかってきて、何にもわからなくなってくる……何にも考えられない、なぁんにも思い出せない……催眠中のことはすべて忘れちゃう……でも……」

 立川は高いの左胸を「とんとん」っと軽く突いた。

「ここ……私が今日あなたに与えた暗示……ぜ〜んぶここが覚えてる……すぅ〜ッと染み込んで、あなたの『心』に残るの……」

(高井さん……本当に気持ちよさそう……)

 いつの間にか猪狩は身を乗り出していた。

「今からあなたは目覚めるけど、私が今から言う言葉を聴いたら……」

(『また深い催眠状態に……』か?)

 しかし、その後に続く立川の言葉は猪狩の予想を完全に裏切った。

「私が今まで与えた全ての暗示は、あなたの心から完全に消え去るわ……」

(……!)

 猪狩は予想とは正反対の立川の言葉に戸惑いを隠せない。

(なぜ……普通こういう時は次の誘導のために暗示を残すものなのに……)

 そしてそのとき、彼女はまた例の悲しげな表情を見せた。

(……立川さん……まさか……)

 猪狩は何かに感づいていたようだった。

 しかし、このときはまだその結論を確信へ導くだけの材料は無かった。

「いやぁ、桂! お前の、え〜……『催眠術』? すっげぇいいよ!」

 突如響いた高井の上機嫌な声に猪狩は驚いて体勢を崩す。

 どうやら考え込んでいるうちに終わっていたようだ。

「ん? 誰かいるの?」

 高井に気配を感づかれ、猪狩は急いで扉の所へ戻り、そして扉を開けた。

 ガラガラガラ……

「全く、参ったよ……昼休みにまで仕事だもんなぁ……」

 猪狩はさも今入ってきたかのように振舞う。

 高井は笑顔で歓迎したが、立川はなにやら腑に落ちないといった表情だった。

「さってと……あたし、昼飯まだなんだよなぁ。それじゃあ学食行ってくる。はぁ〜、肩凝り取れた〜……!!」

 そう言うと高井は意気揚々と生徒会室を後にしたのであった。

 生徒会室を一瞬の静寂が支配し、直後沈黙は破られる。

「猪狩君……いつからいたの?」

「いや、ついさっきだよ」

 猪狩は動じない。

 内心動悸は激しく冷や汗が止まらないが、焦れば……バレる。

 ここはあくまで平静を装うしかない。

「そうなの……ねぇ、今ちょっと時間ある?」

 立川もまた気づいているのかいないのか、あくまで普通に振舞っている。

「あぁ、大丈夫だよ……どうかしたの?」

「そっか、あのね……?」

 次の瞬間、猪狩は背筋が凍る思いがした。

「あのね? 『催眠』って興味ない?」

 気づいてる……確信は無いようだが……

しかし間違いない、彼女は猪狩がもっと前からいたことを感づいている……

 猪狩に選択権は無い。

 下手に否定すれば見ていたことを相手に宣言するようなものだ。

 そうすれば立川は本格的に猪狩を狙い始めるだろう。

 そう、選択権は無い。

 それがわかっているから立川もこれほどストレートに攻めてきたのだ。

「へぇ、面白そうだね。やってくれるの?」

 猪狩は笑顔で答える、彼女も笑顔で答える。

 猪狩にはもう、相手の土俵に上るしか、道は残されていない……

「えぇ、私も今暇なの。やってみてもいいわよ」

 立川は柔らかい笑みをこぼした……『獲物を捕らえた』ってとこだろう……

 猪狩は彼女の言うがままに椅子に座る。

 それはつい先まで高井が座らされていた椅子だ。

 そして猪狩もまた……

しかし、猪狩は簡単に落とされはしない。

 策はあるのだ。

 催眠とは集中力が重要だ。

 あくまで『センスの無い被験者』をふるまって集中しないようにすれば良い。

 ラポールもなく集中もできない被験者に催眠をかけられるはずなど無い……

 立川とて怪しまれるような行動はできないはずだ、いずれ諦めるだろう。

「じゃあ、まずは猪狩君の被暗示性をテストしてみましょうか。そうね……それじゃ、今日はこの振り子を使ってやって見ましょうか。」

 そう言うと立川さんは僕の肘を固定して振り子を持つよう指示する。

「じゃあまずは、その振り子をじ〜っと見つめてね?」

 それを受け猪狩は振り子を見る……フリをして僅かに視線を外そうとした。

「ほら、しっかり見て!目が離せない!」

(!?)

 突如強い口調で言い放つ立川に、猪狩は不意をつかれてしまった。

(あッ、やば……目、はなせない……!)

 立川の腕はどうやら猪狩の想像以上のようである。

 まだ催眠状態にもなっていない相手に一撃で暗示を滑り込ませた。

 こうなったら最早『かからない被験者』というのは不可能である。

 猪狩は作戦を変更した。

 少々危険ではあるが、こうなったら『かかったフリ』しかない。

 本当に催眠状態になってしまう前に、こちらから催眠状態を演じるのだ。

「そう、振り子をじ〜ッと見つめて……だんだん左右に揺れてくるわよ……」

 猪狩の振り子は立川の暗示のままに揺れ始める。

 立川が『揺れる』と言う度にさらに大きく振り子は宙を彷徨う。

(ぼ、僕って……被暗示性、高いのかな……)

 あまりの反応っぷりに半ば諦め、半ば自分に呆れる猪狩だったが……

「やだぁ! 猪狩君たらすッごくかかりやすいんだからぁ! ほらもう大丈夫よ。目、離せるわよ? あはは、先のは半分冗談のつもりだったのに!」

 立川ははじけるように笑うと、突如催眠をやめて振り子を取り上げた。

(何故……今のペースならそのまま落とせたのに……)

「さ、テストは終わりッ! まだ大分時間あるみたいだし、本番行っちゃおうか」 

 そう言うと、立川は猪狩に微笑みかけた。

 その様子を見て、やはり猪狩は何かひっかかるものを感じるのであった。

 しかし、真の戦いはここからだ。

 今は目の前の危機を回避することが先決だった。

(さて、油断すればあっという間に催眠状態だ。とにかく用心しないと……)

 そして、いよいよ猪狩にとっての正念場が訪れるのであった。

「さぁ、それじゃあ猪狩君。まずは、私の目をじっと見つめて?」

 そう言うと立川はすっと猪狩の目の前に顔を近づけた。

 なるほど、自分の目を注視させれば相手が指示に従っているか一目瞭然。

 立川は猪狩の逃げ道を封じる策に打って出たようである。

 しかし、猪狩とてその程度では動じはしない。

「た、立川さん、なんかそれ、恥ずかしい……他のにして……?」

 猪狩のその言葉は演技だったが、図らずも頬は赤く染まっていた。

 しかし、それが功を奏したのか立川は仕方なく方法を切り替えてきた。

「……仕方ないわね。じゃああなたの見やすいところでいいから……」

 少し苦笑いしながら立川は言葉を続ける。

 だが、その次に発せられた声はそれまでとはまるで異質のものだった。

「それじゃあ、まずはふかぁ〜く深呼吸しましょうか……」

(あ、また……この声……)

 それはあの時、高井がかけられていたときに聞いた声だ。

 なんだか頭の奥から溶かされるような感覚。

 自分が深く息を吸うのにあわせて、立川の声が中へと甘く響いてくる。

(おっと、危ない危ない! ペースをとられるところだった……)

 猪狩は何とか持ち直し、立川から仕掛けてくるのを待ち構えていた。

 遠くからはお昼の放送が聞こえている。

 今は昼休みの半ば頃だろうか……

 そして、いよいよ立川が仕掛けてきた。

「さぁ、猪狩君……だんだんまぶたがおも〜くなってくる……」

 実に単純な暗示だった。

 しかし、ずっと深呼吸を続け、半ば催眠状態に近い猪狩には十分だ。

 そして、この甘く誘うような立川の声。

 さらに、先ほどのテストで猪狩の被暗示性の高さは実証済みだ。

 以上の要因から、わざわざ回りくどい手を使うのは時間の無駄と考えたのだ。

(クッ、こりゃすぐに落とされるな……)

 猪狩は先手を打ち、計画通りわざと眼を閉じた。

「ほら、目蓋がくっついて……もう目が開かない……」

(かかった……!)

 猪狩の計画通り。

 目蓋は……大丈夫だ、自分の意思は通じている。

「さぁ、ふかぁ〜く沈んでいく……頭がぽぉ〜ッとしてくる……」

 立川は猪狩の頭に優しく手を添えると、ゆっくりと回しながら暗示を与える。

 なおも深化暗示を与え続ける立川の甘美な誘惑に猪狩は何とか耐えていた。

(……あれ……?)

 そこまでずっと暗示を与え続けていた立川が急に黙り込んだ。

(どうしたんだろう……)

 静寂に包まれた室内、微かに聞こえる放送がここが学校だと思い出させる。

 立川がわずかに息を吸い込んだ。

 来るか……!

「ねぇ、猪狩君……? いつまでかかったふりするの……?」

 あまりに強烈な一言に猪狩は一瞬はっとする。

 まさかばれていたのか……

(いや……)

 猪狩は危うく動揺しかけた心を必死に押さえつける。

 立川は黙って猪狩の様子を見続けている。

 猪狩は内心冷や汗を流しながら時が過ぎるのを待った……

「……な〜んだ、ホントにかかってたんだ……」

 立川は拍子抜けしたように肩をすくめるとフゥッと溜息をついた。

「心配して損しちゃった……」

 そう、これこそが立川の最後の、最大の罠。

 猪狩はほぼ確実に高井の催眠を目撃していただろう。

 そう考えた立川は次のターゲットを猪狩に設定した。

 しかし、見られた以上は向こうも素直にかかるとは思えない。

 そう、『かかったフリ』である……

 猪狩はおそらくかかったフリをして場をやり過ごそうとするはずだ。

 立川は催眠をかける前からそれはほぼ確信していた。

 しかし、いざ催眠を始めるとその様子があまりにも自然だったため、本当に演技なのかどうか確信が持てなくなった。

 そこで立川は罠を仕掛けたのである。

『いつまでかかったふりするの?』

 フリだとしたら、この一言で必ずや意表を突けるはずである。

 あわよくばその瞬間に驚愕法で一気に催眠へと落とせる。

 そこまで首尾よくいかなくとも、確実に優位は作り出せる。

 本当にかかってでもない限り、この言葉を聴いて平静を保てるわけがない。

 が、いざ実行してみると、猪狩はうんともすんとも言わない……

「ちょっと考えすぎ、かな……」

(た、助かった〜……)

 その後は高井のときと全く同じだった。

 八十島に対して敵意を持たせ、解除の後催眠も施してゆく。

 無論その間猪狩はずっとひやひやしていたわけだが……

「1、2、3……! ほぉら、すぅ〜っと意識が引っ張りあげられる。」

 さすがに時間が無かったのか、立川は手早く解催眠を済ませた。

 猪狩が安堵する暇も無く次の時間の予鈴が全校に鳴り響く。

「ご、ごめん猪狩君ッ! 私次の教室遠いの!!」

 言い残すと立川は自分のかばんを抱えて足早に立ち去っていった。

「……僕も、授業いかなきゃ……」

 生徒会の仕事はできなかったが、猪狩には新たな仕事が課せられた気がした。

 

 あれ以来だ……

 学校全体がなんとなくおかしくなった……

 意識しなければわからないけど、確かに前と違う……

 そう……『彼』を、そして『彼女』を中心に……

 問題は、無い……

 ただ……

 とても、気持ち悪い……

 急いがないと……

早く、彼の所へ……

 たった二人の生徒の喧嘩……?

 いや、違う……

 これは……『彼』と、『私立清流学園』との戦い……

彼は僕の恩人で、尊敬もしてる……

しかし、これは確かだ……

 このままでは八十島君、君に勝ち目は無い……

全ての抵抗は彼女にとって手の上の舞に等しいのだから……

全ては、彼女の計画通り……

全ては、彼女の計算通り……

ただ一人……

この、僕を除いて……

一筋の光明(完)